[CHREATOR snap #2 ] " EartH " - 揺れる、描く、旅をする -

  

 

消したい、殺したい ー

 

インタビュー中にそんなワードを口走らせてみせたのは、

resin artistであり、画家として活動するkumi andoさん。

そんなワードに関するエピソードを語るkumiさんの表情はあくまで淡々と、

だがどことなく清々しいものにも感じる。

 

高校生の頃からヘアメイクの仕事に興味を抱き、受注し、

後にインテリアデザイン、フォトグラファーもマルチにこなすことがあったkumiさん。

一度は都内を出る生活をするも、24歳頃に都内に戻り、絵を描き始めたという。

 

「(都内に)戻ってきて、家もなくお金もなくツテもいなく、これはマズいぞと思って、

いろんな仕事を手当たり次第こなしてきた。

もともと人にあんまり悩みとかを言えるようなタイプではなくて、

家でひたすら自分の中の禍々したものとか、ネガティブな感情を絵に全て吐いて、

それを形にする事で発散していた部分があって。

 

そういうネガティブな感情を吐露した作品をひたすら作り続けてて、

その時はまだそういう【自分の良くない選択】とか【自分の性格】とかを変えたいとか、

消したいとか殺したいって思ってて。」

 

kumi
 
  

「浄化」される表現 -

 

「凄い綺麗ですね」

「これ幾らで売ってくれるんですか」

これらの言葉は、インスタグラムやネットに掲載されたkumiさんの絵に

寄せられるようになったコメントやメッセージだそうだ。

 

「その時に私がこう【消したい】【殺したい】と思って吐き出したネガティブな感情を、その人達が綺麗だって言ってくれたことに対し【私は、あ、この感情は消さなくていいんだ】と気付き、

それを綺麗なものとして受け止めてくれる人がいた事によって

その作品たちが浄化されていく感覚を味わったし、

私はこういうネガティブな感情を持って生きてていいんだ、と凄く肯定された気もした。」

 

2013年、そこから画家として本格的な制作活動を始める。

まだその時も、自身の中の、ドブのようにモヤモヤしているものを吐くように表現していた

というが、展示会や色んな人との出会いの中で「綺麗だね」って言って貰う度に、

kumiさん自身のマインドも浄化され、ある種叫びにも似たアブストラクトな作品達は自然な流れでオーシャンアートへと変貌を遂げていったようだ。

 

kumi hand 

  

継承、アップデート -

 

2013年から始めた当初に比べ、現在Ocean artは国内で制作キットも販売され、

誰でも手軽にできるほどに普及しているという。

最初ネット、インスタとかで同じようなことをやってる人を見かけた際は

焦りを感じることもあったようだが、彼女はこう続けた。

 

「自力で培ったOcean art に対しての膨大な知識や経験値は

ずっと自分の中だけで大切に温めてきたものだけど、

次は多分、それを人に教えるフェーズに入ってきていて。

だからワークショップも最近始めて。みんなに面白さをより伝えていきたい。」

 

自身の作品作りのノウハウを継承すること。その他にもやりたいことがあるという。

 

kumiさんの祖父は仏師であったり、歴史好きな父親と共に

日本のお城や寺社を見ることがあったりすることで

彼女を形成するものは日本的な、いわゆるナショナルな要素であった。

 

「オーシャンアートは結果としてオーシャンアートになったけど、

今後やりたい活動っていうのは自分のそういうアイデンティティを表現できるものに

したいなっていうのがあって、例えば漆喰や岩絵具を使って枯山水のような日本庭園をモチーフにしたテクスチャーアートとかやってみたい。」

 

より広がりを見せつつある彼女の表現を、首を長くして待ちたいところだ。

 

 

 

EartH up

  

地球に内在する「アート」 -

 

ここで、Ocean artに用いられてるシリーズ【EartH】について、彼女は解説する。

 

「” E a r t H ”でEとHだけ大文字で真ん中だけ" a.r.t "だけ小文字にしてる理由が

ちょっと浅はかなんだけど。ていうのは、

地球(EARTH)の真ん中、地球の中に必ずアートがあるって意味で、小文字でart。」

地球を形成しているものはアートだっていう意味合いを見出したとのこと。

だからこそEartHはOcean artだけではなく、様々な形、色、情景を見せる可能性を孕んでいる。


「でも、結局(表現の)根底は変わらず。音楽もそうだし、絵もそうなんだけど、

結構自分の気持ちに鈍感なところがあって、いろいろ難しく考えてはいるけど、

【あの時めちゃくちゃしんどかったな】とか【あの時めちゃくちゃ楽しかった】とかの

自身の気持ちは後々わかったりすることが多くて。

 

 

無意識に、あ、今日なんかクラシック聴きたい。ちょっとソナタな気分。みたいな時に、

それを聞いた時に【私今、すごく疲れてるんだな。】とか、

絵を描いてて、滅茶苦茶ぐちゃぐちゃになった時には【私、すごい病んでいるんだな】とか、

「絵」とか「音楽」とか自分が無意識に選択したものによって教えられることがすごく多く。

それが楽しくて絵を描いていたりもします。」

自分のアイデンティティみたいなものを発信したいとは言いつつも、

その時の自分の精神状態、気持ちの揺れ動きを形にする過程を楽しみ、制作するのだという。

 

「意図してこれを作りましたみたいなものではなく、

その時の自分の精神状態を形にしてるのを楽しみながら作った作品がこれです、のように。」



この空間に並んでる作品達は" Ocean art "であると共にkumiさんの「マインドジャーニー」そのものでもあった。

 

その上で目を向けてると、作品の見え方がだいぶ変化するのではないだろうか。

 

 

EartH

  

逆境が導いた「実感」と「解釈」 -

 

元々海を描きたかったというより、今までの経緯から自然と表現のアウトプット先が【自然】のものになり、

【自然が創造する美しいもの】を勝手に自分が作れるようになったkumiさんが

彼女の知見から得たものを教えてくれる。


「変わりたいと思ってた時期に沢山の本を読んで、よくある

【こうすれば幸せになれる】とか【こうすれば稼げる】みたいな本もひと通り読んだけど、


言ってる事の本質はみんな一緒で。

かといってそんな単純な話でもない。

そういったものはあくまでも一つの指標に過ぎないし

世の中はもっと複雑なグラデーションでできてる。

 

それと自然を重ね合わせると、自然の創造するものっていうのも

一見シンプルに見えるけど構造はとても複雑で。かつ普遍的で。

私達の一瞬一瞬の言動の【根底】にある意識も自然に近くて普遍的だと感じる。


そういった壮大なテーマで今まで活動して、

ワイドな考えで生きていきたいなぁと思っていたけど、ある程度年齢を重ねてから

なんかちょっとこう小さな事に反骨精神が抱いて生きてるのもまたいいのかな、

とか思ったりもするんです。

 

【全員を好きにならなくていいじゃん】とか、

【別に毎日幸せだなと思わなくていいじゃん】とか。

 

若い頃は幸せになりたくて、幸せになるために色々もがいてたけど、

そういうものが自分の中で呪縛みたいになってた部分もあるし、

諦めっていったら諦めかもしれない。ただ、根から明るい人もいれば根から暗い人もいて。

 

私の場合は逆境だったりとか不幸なことがあったりとか、何かハンデがあることで、

自分の能力が発揮されるんだなって、様々な困難を乗り越える度に実感してきたから。うん。

だから学んだ指標を自分なりに解釈して落とし込めて本心で語れる事、

今はすごく幸せだなって感じる。」

 

kumi

  

求められることで生まれる色 -

 

画家を本格的に始めた当初、食べていく為にフォトグラファーや

インテリアデザインの仕事もこなす時期があった。

インテリアデザインを手掛ける際の根底は、画家の際の根底と同質であるが

カメラを持つ彼女は上記とはまた違う思いを有していたそうだ。

 

軸が画家であるものの、奥の深いカメラの仕事に対峙する際は

元々人が好きな側面も持っているため、また違う分野で人としての美しさ、

どう見せたら美しいのかとか、この子はどう見せたいのか

を解釈しながら撮ったりするのが好きで、

表面的であったものの、画家やインテリアデザインとは違う楽しさを感じていたのだという。



「その時は

画家として自分のアイデンティティを認められた

ことへの安堵感はあったけど、

まだ何かになりたかった気がする。まず、自分が何者なのかも分からなかった。

で、何を求められてるのかも分かんなかったし、求められたら答えなきゃいけないって

思って生きてた気がしてる。」


「今までのそういう経験を通して、私は自尊心が本当になかったから、

誰かが自分の価値を見出してくれると他人任せにしていた時期。」

 

その思いは、本当に自身の低い自尊心のせいだけなのか。

人が好きだという彼女の根底にある暖かなものもその中から覗いてるように感じた。

 

 kumi

 

「無理をしない」選択と「無理をする」愚かさ -

 

今も求められることへの使命感や、自尊心の低さからくるものが彼女に内在するのか、聞いてみる。

 


「ないとも思ってないけど、闇雲に考えなくなったかも。

きっと昔より理屈臭さがなくなったかもしれない。

色んなことを掻い摘んで、掻い摘んで、掻い摘んで、掻い摘んで。

自分には合う、合わない、合う、合わない。

で振り分けていって、どんどん軸がじわじわ出てきて。

それが世間的に正しいか正しくないかは分からないけど、自分に【合うもの】と【合わないもの】が

感覚として分かるようになったから、あんまりそういう部分で今はこう悩んだりとかはしない。

もうスパンスパンと食べ物のように、あ、これは好きじゃないから食べない。

これは好きだから食べるみたいな。食べることによってどうなるか判る、みたいな。」

 

「無理して良い方向に進もうとする【愚かさ】もすごい散々味わってきたし。」



世間に出回る自己啓発本や、インスタグラム界隈の風潮とは大きくギャップを持つこの一言には

妙に惹かれるものがある。

 

 

言葉を通じて -

 

簡単に言えば「別にかっこ悪くてもいいじゃん」みたいになっちゃうんだけど、

なんかそういう言葉も臭くて嫌いで、いちいちそれも言いたくない。

だからこそ一時期は

別にわかってくれる人だけ分かっていればいい、だったり

展示会の際も、見た人が思うように思ったらいいと思っていたという。

 

「ある時、『人にプレゼントを渡す時に相手が大事な人だったら、

綺麗にラッピングをして渡したいって思うのと一緒で、

言葉も誠意を込めて伝えたいと思った時に言葉っていうラッピングをして

渡すのが一番いいんじゃないか』っていうのを何かで聞いた時にすごく腑に落ちて。

別に有名でもないのに尖った前衛アーティストみたいなキャラだったけど、

やっぱり一人一人にちゃんと自分の言葉を届けて、その絵を解釈してくれることも大事なんだな

というのは、最近ちょっと思ってます。」

 

たまに思わず口元が緩むような自虐を挟む彼女の言葉に、

話題とのギャップを感じ、また口角が緩む。


「結局、お金なんてあってもしょうがないよって言う人もいるじゃないですか。あれってお金を持っている人が言うからそうですよねって感じで、お金を持ってない人が同じセリフを言っても1ミリの説得力もなくて。」

なるほど。彼女の口から出る言葉が魅力的なのは、彼女が言葉にかける「裏付け」と「思慮」に

よるものなのかもしれない。

 

  

JAM EartH

 

選択が容易ではない欲だから - 

  

アーティストとして活動するkumiさんのライフスタイルにフォーカスを置いてみる。

普段から頭の中で考えることが多く、瞑想が苦手だというkumiさん。

それも相まって彼女は睡眠を一番大事にし、一日8時間は管理して睡眠に充てるという。その理由をこう語る。

 

「世の中とても便利だから食事も本当にいいものを取ろうと思えば

街の至る所に意識の高いお店がたくさんあるし、それで自分の意志で栄養を摂って

自分が食べたいタイミングで食べられてっていう「自分の選択」ができるけど、

睡眠欲に関しては、コントロールが利かない。今日は必ず上質な睡眠を取る!と意気込んで、

目を閉じても狙い通りになんかならないし、結局自分達が睡眠を取るにあたっては

ベースを整えることしかできなくて。

だからもう完全に自分が、超ベストな状況で完全に眠れるように、

こだわってるポイントはかなり多いです。」

 

睡眠のベースを整えるために、彼女がこだわるものがある。それは、眠る前の香りだ。

どういう制作をしたいかによって、フレッシュなキャンドルを用いることもあれば、

お香を用いることもあるそうだ。

このOcean artはどの香りの産物なのか、想像しながら鑑賞するのもまた楽しいかもしれない。

 

kumi back

 

新品なのにどこか懐かしい服 -

 

Q:今日着ていただいた服、どうでしたか?

「全裸で寝てるのと変わらないくらい気持ちが良いかな。」

着た瞬間から

自分が肌身離せない素材の、使い込んで自分の匂いが染み込んだ

布団やぬいぐるみ、枕に身を包むと、すぐ寝れる感覚に似ているとのこと。

 

元々肌があまり強くなく、寝る際に身に着ける衣類の素材も普段からこだわっているkumiさんはさらにこう続けた。

「母親チョイスの洗剤で、母親なりの干し方で、母親なりにアイロン掛けて畳んで置いておいてくれて、

それを何気なく着た瞬間と似ている。

身に纏った瞬間1発目でそれを感じられるみたいな着心地がありました。

新品なのに、愛用品のような、どこか愛着が湧く肌触り。」

 

kumi

tops:Classic pajama - TERRA-COTTA – CHRAM ¥19,800-jyp

 

 

 睡眠の中の正装 ー

 

「私明晰夢を見るのが好きなんです。

意識的に明晰夢を見る時は、どこか特別な場所へ旅行するような感覚であったのね。

そう考えたらそんな大事な瞬間に着ていたい服っていうのはこれ(CHRAM)かもしれない。

睡眠の中の正装みたいな感じかもしれない。」

 

睡眠のパートナー、夢の中のパートナー。

 

アートとCHRAMとの融合ビジョンが垣間見える瞬間であった。

 

 

EartH

kumi ando card

  

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art exhibition JAM@JOINT HARAJUKU  9/30-10/6

【kumi ando】×【maro】 二人による共同展示会

 

<Profile>

【kumi ando】

interior designer resin artist

1987年10月16日生まれ。 神奈川県出身。

2013年から海や地層など自然が作り出すアートの普遍性をコンセプトとした 「EartH」の制作を開始。 造形作品だけに留まらず空間デザインやインスタレーションといった 様々なジャンルでEartHを表現している。

#SNS

Web site :ART LIFE by kumiando

 Instagram:ART LIFE(@kumi.ando)

 Twitter:kumi.ando(@kumi_ando_)

 #今後告知 

禅や枯山水をテーマにしたテクスチャーアートのプロジェクトの始動と共に アロマリストとコラボレーション、日本文化を感じるアートと香りのエキシビション等を展開していく予定。